11月3日〜12月18日 飯川雄大個展"ウイニングポジション”

昨日から店内にて飯川雄大さんの個展"ウイニングポジション”を開催。インスタレーションと作品展示中です。

今年の5月〜7月に京都HOTEL ANTEROOM KYOTO内「GALLERY 9.5」で開催した『Happenings happened – 07飯川雄大 個展『ひとりはみんなのために』』の巡回展になります。

作品については実際にご来店いただき、触れていただきたいのであまりお話ししないで、不肖私が作品に寄せさせていただいた文を宜しければご参照くださいませ。

飯川雄大さん個展「ウィニングポジション」のこと

私の話を少し。小学校の頃、昼休みの教室が好きでした。最初は校庭を観察し、そこでの出来事を勝手に物語仕立てにして想像するのが好きだったのですが、次第に興味は教室内に移りました。
校庭でボール遊びやゴム跳びに興じる級友を余所に、車座になり図書室で借りた占い本を広げて盛り上がる女子グループ、教室で飼っている金魚の殺し方を延々と空想の中で算段するO君とH君、机をキャンパスに大作を描き上げるT君、なぜか早足で教室の内周を時計回りにぐるぐるとまわり続けるS君……。校庭での狂騒から離れ、教室内ではいつも奇矯ながら緩やかな時間が流れていました。

さて、今回の飯川雄大さんの個展「ウィニングポジション」は、サッカーの試合中のゴールキーパー、しかも終始試合を優位に進めているサイドにスポットを当てた作品群です。
サッカーは言うまでもなく、双方がボールの行方を支配し追いかける競技です。そして、いつもボールを中心にドラマは起ります。ボールは位置や保持するプレイヤーを替え、絶えず動き回ります。プレイヤー同様、観客もまた、敵味方の位置関係などを察知・予測しながらその行方を逃すまいと追いかけます。目を離した瞬間、次に何が起こるのかは誰も予測はできないのです。
では、フィールドの中で一番ボールから離れた場所ではどのようなことが起っているのでしょう?フィールド内で同じ時間が流れているはずなのに、ドラマの起らない空間ではとっても緩やかな時間が流れています。

しかし、ボールを取り巻くドラマを追いかけるほとんどのプレイヤーや観客からは、このように脱力するような時間が流れている場所があるという情報は取り去られてしまいます。
我々はいつも情報を意図的に、あるいは無意識的に選択しています。今作品群では、ボールを中心としたその周辺の情報を多く取得するために、その外側に広がる情報を放棄しているのではないでしょうか?そんな疑問の提示を感じました。
今回の展示はそうした“トリミングされた情報”の外側に目を向ける、あるいは認識する契機になるのではないかと思います。
 目を広げると教室の中にクラスメイト達の可笑し味と、ゆったりとした時間と景色が見えた小学生だったあの頃、掃除用具箱と窓壁との隙間に挟まり、校庭を眺めている自分もまた、その景色と時間を構成するひとりだったことでしょう。

飯川雄大 l Takehiro Iikawa
美術家。映像、写真、イラストレーションなど様々な分野で活動。代表作として、 日常の断片や見過ごす風景を定点撮影した「時の演習用時計」(2006〜)、サッカーの試合中ボールに触れることのないゴールキーパーを捉え続ける「ハイライトシーン」(2014 〜)、“衝動”を画像で記録することで欠落する情報に着目する「デコレータークラブ」(2013 〜) がある。主な展覧会は「遭遇するとき -Happening Upon-」(滋賀県立近代美術館・滋賀・2013)、「OncewasNow, NowisOver, Yetwill Come」(Platform China・香港・2013)、「Rendezvous 09」( Institut d’ artcontemporain・リヨン・2009)など。ハジメテン、ばうみみ、COUMAのアーティストコレクティブでも精力的に活動する。 2015 年より神戸市のアート・デザインセンターKAVC×CAP×KIITOの3館連携企画「Marching KOBE」の公式キャラクター「猫の小林さん」を制作。神戸市在住。1981年生まれ。小学校3 年の時にスーパーロングシュートを決めた快感と喝采が忘れられず、サッカーに取り憑かれる人生がスタート。


飯川さんは現在、六甲山『六甲ミーツアート』https://www.rokkosan.com/art2016/、塩屋『しおさいhttp://www.nice-shioya.jp/event/shiosai2016にて、「デコレータークラブ」を展示中です。
どうぞ当店の展示と併せてお越しくださいませ。